日・ベトナム外交関係樹立50年

日・ベトナム外交関係樹立50年 座談会 日・ベトナムの絆、次代へ

毎日新聞 2023/9/27 東京朝刊 4546文字 

1973年9月、フランスの首都パリで日本とベトナムの代表者が両国間の関係発展を目指し外交関係樹立の交換公文に署名した。それから50年。両国はさまざまな分野で協力関係を深めてきた。外交関係樹立50周年を機に、5月に着任した駐日ベトナム大使のファム・クアン・ヒエウ大使と福田康夫元首相、ベトナム人俳優のフォンチーさんが両国の友好について語り合った。進行役は、4~6月に開かれた「ベトナムフェスティバル2023」共同委員長の青柳陽一郎衆院議員が務めた。【文・藤田裕伸、写真・松田嘉徳】

 青柳陽一郎衆院議員 50年の歴史を経て日本とベトナムが良好な関係にあるなか、ベトナムフェスティバル2023が開かれた。

福田康夫元首相

 ファム・クアン・ヒエウ大使 節目の年に就任できてうれしい。着任してすぐにG7広島サミット、ベトナムフェスティバル2023という印象的な行事があった。特にフェスティバルでは文化を通じての交流が見られ、両国民間で強い親近感が生まれていることを感じた。

 フォンチーさん 2010年から東京会場の総合司会を務めさせていただいているが、毎年両国の若い人がたくさん集まり、うれしい気持ちになる。日本生まれ日本育ちのベトナム人として、これからはもっと交流活動に貢献できるようになりたい。

青柳陽一郎議員

 青柳議員 現在の日本とベトナムの関係をどのように見ているか。

 福田康夫元首相 お互いに必要とするニーズと供給がうまくマッチした関係にある。日本は産業技術、経営ノウハウなど経済に関係するものを供給し、ベトナムは人材を供給してくれている。この関係はしばらく続くと思うが、その先はお互いに切磋琢磨(せっさたくま)して高みを目指し、力を合わせて次の世代につなぐことが課題だ。

 ヒエウ大使 20年前に名古屋大大学院に留学した時、ベトナム人に対する温かい気持ちを実感した。大使として再び日本に来てもその温かさは忘れていないし、より熱くなっている日本人を感じている。要人の交流も増え、誠実・信頼・人情というキーワードのもとでますます関係が強化されているのは間違いない。

 

ファム・クアン・ヒエウ大使

 青柳議員 進出先としてベトナムを選ぶ日本企業が増え、まずは大手が進出してきた。例えば1997年に設立されたタンロン工業団地(ハノイ市)は住友商事が陣頭指揮を執り、今では100社以上の企業が入居している。また、ベトナム人の日本語教育も浸透し、技能実習生だけでなく高度人材やIT人材の育成も進み、今やベトナムと日本は経済のみならず多くの分野で「相思相愛の関係」となっている。このような現状を踏まえ、日本とベトナムの次の50年をどのように見るか。

 福田元首相 両国の交流はいろいろな場面でできる。医療、学術、技術発展も含めて文化という意味において、その文化をお互いに受け入れて必要なところに活用することがより良い社会を作っていくための手段だと思う。その結果、お互いの気持ちを理解し、悩みを助け合うようになる。これが平和の原点だ。

フォンチーさん

 ヒエウ大使 経済分野では、経済協力による相互補完性が高く、支援し合えるような関係ができている。また、若手世代は両国の未来だ。ベトナム人が日本で勉強して多くの知見や技術を習得することは、日本の将来に貢献できるだけでなく、ベトナムの発展につながる。

 フォンチーさん ベトナムにはまだ貧困な地域がある。ベトナム人はみな親日で、困った時には「日本だったら助けてくれる」と思っている。学生時代は外国人であることでいじめられたりしたが、ベトナム人であることを逆手に強みと捉え、自信を持った。貧困な地域に行った時、日本で自分の知名度を上げることがベトナムのためになるのではないかと思い、両国の若者の懸け橋となって成長していきたい。

 青柳議員 両国関係は年々深化を続けている。1990年代に日本企業が進出し、次第に現地調達率も上がり、日本企業が直接雇用する時代になった。特にIT分野では顕著だ。今後さらに対等なパートナーになっていくだろう。そのためには、多層的重層的な関係作りが必要で、ベトナムフェスティバルはその役割を担っている。

文化や食を紹介する集い、全国4カ所で

東京・代々木公園で行われた開会式

開会式に出席された佳子さま=北山夏帆撮影

 日本では今年、ベトナムとの外交関係樹立50周年を祝うイベントが各地で催されている。ベトナムの文化や食を紹介する「ベトナムフェスティバル2023」(同実行委員会主催、外務省、ベトナム外務省など後援)は国内計4カ所で開かれ、多くのベトナムファンやベトナム人でにぎわった。

 同フェスは4月に東京都豊島区の池袋西口公園野外劇場と福岡市中央区の天神中央公園、6月には東京都渋谷区の代々木公園イベント広場と大阪市中央区の大阪城公園で開かれた。ベトナム料理店や雑貨店などが4カ所で計約270店出店。米麺の「フォー」やフランスパンに肉や野菜を挟んだ「バインミー」が飛ぶように売れた。

 6月3日の代々木公園の会場には、開会式に秋篠宮家の次女佳子さまが初めて出席された。林芳正外相(当時)とベトナムのレー・ティ・トゥ・ハン副外相らも駆けつけ、祝辞を述べた。

来月7、8日にはフォーのイベント

 日本ベトナム外交関係樹立50周年を記念するイベントはまだ続く。10月7、8日には東京都渋谷区の代々木公園ケヤキ広場で「フォーフェスティバル2023」(同実行委員会、トイチェ新聞社主催)が開かれる。

 ベトナム人のソウルフードといえるフォーに特化したイベントで、約40店がフォーを販売する。出店者が日本の食文化に合わせたオリジナルのアレンジメニューを考えて披露し、審査員が試食して優勝者を決めるコンテストも用意されている。

 ●要人の往来急増

チュオン・タン・サン国家主席来日(国賓)=2014年3月

天皇、皇后両陛下(上皇ご夫妻)ベトナムご訪問=17年2~3月

菅義偉首相ベトナム訪問=20年10月

 50年前の「外交関係樹立」から「信頼関係の構築」、そして「包括的協力関係の強化」へと発展してきた日本とベトナム。近年では政府要人の往来が増え、より強固なパートナーとなった。

 2006年にはグエン・タン・ズン首相が来日し、安倍晋三首相との間で「戦略的パートナーシップ」を構築することに合意。さらに安倍首相は14年のチュオン・タン・サン国家主席来日時に、戦略的パートナーシップ強化を盛り込んだ共同声明を発表した。

 菅義偉首相は20年、就任後最初の外遊国としてベトナムを訪問し、岸田文雄首相も就任して約半年後にはベトナムを訪問している。

近年の両国要人の往来(肩書きは当時)

 2014年3月

チュオン・タン・サン国家主席来日(国賓)=写真<1>

   15年9月

グエン・フー・チョン共産党書記長来日(公賓)

   16年5月

グエン・スアン・フック首相来日(G7伊勢志摩サミット)

   17年1月

安倍晋三首相ベトナム公式訪問

   17年2~3月

天皇、皇后両陛下(上皇ご夫妻)ベトナムご訪問=写真<2>

   18年5~6月

チャン・ダイ・クアン国家主席来日(国賓)

   19年6~7月

フック首相来日(G20大阪サミット)

   19年10月

フック首相来日(即位の礼)

   20年10月

菅義偉首相ベトナム訪問=写真<3>

   21年11月

ファム・ミン・チン首相来日

   22年4~5月

岸田文雄首相ベトナム訪問

   22年9月

グエン・スアン・フック国家主席来日(安倍元首相国葬)

   23年5月

チン首相来日(G7広島サミット)

   23年9月

秋篠宮ご夫妻ベトナム公式訪問

 ●人的交流の拡大

 国交が深まるにつれて両国民の行き来も増え、在日ベトナム人の数も約10年で飛躍的に増加した。座談会で進行役を務めた青柳陽一郎衆院議員は「日本で働く外国人は180万人を超え、そのうちベトナム人は50万人に迫り最も多い」と話す。法務省統計によると、在日ベトナム人の数は約10年前の2012年12月の5万2367人から22年12月には48万9312人と9倍以上になった。留学生も10年で5倍以上に増えている。

 観光客数も拡大。ベトナム政府観光総局によると、ベトナムを訪れた日本人は11年の48万1500人から新型コロナ禍前の19年に約2倍の95万1962人となった。日本政府観光局の統計では、ベトナム人の来日者数は11年が4万1048人で、19年には10倍以上の49万5100人に急増した。

 ●ベトナムへの修学旅行再開

2018年、ホーチミンに降り立つ千早高校の生徒ら

 王朝の時代からベトナム戦争、そして現代の高度経済成長と国際化という時代を通し、ベトナムの歴史は常に変化に富み多様な文化と関わってきた。その躍動的な街や人から日本の若者が学ぶことが多いという観点から、修学旅行の訪問先をベトナムにする高校が増えている。

 日本修学旅行協会の統計によると、訪問国にベトナムを選んだ高校は新型コロナ禍前の2015~19年の平均で年間約10校。年1600人以上の生徒が北部ハノイや南部ホーチミン、中部ダナンなどを訪れている。

 16年からベトナムへの修学旅行を導入している東京都立千早高校は今年10月、4年ぶりにホーチミン市への「海外英語ビジネス研修旅行」を再開する。旅行の狙いについて同校ビジネスコミュニケーション科の早田(わさだ)智洋主幹教諭は、「発展し続けるホーチミンを肌で感じてもらい、現地の文化や物価、生活などを体験し、その違いを受け入れることができる気持ちを育てること」と説明する。

 同校はベトナム航空を利用し、伝統衣装のアオザイを着た客室乗務員の出迎えや機内食で、生徒が搭乗した瞬間からベトナムを感じるようにしている。現地では大学での英語留学体験や、大学生と一緒に街を散策して異文化を体験するプログラムなどが盛り込まれている。

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 ■人物略歴

福田康夫(ふくだ・やすお)氏

 東京都出身、群馬県高崎育ち。大学卒業後、一般企業に就職。1990年第39回衆議院議員総選挙において旧群馬3区から出馬し初当選を果たす。2007年第91代内閣総理大臣に就任。12年政界を引退。日本アジア共同体文化協力機構会長。

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 ■人物略歴

青柳陽一郎(あおやぎ・よういちろう)氏

 衆院議員 1969年生まれ横浜市育ち。2006年松田岩夫国務大臣政策秘書として日越科学技術協力協定締結に尽力。08年「ベトナムフェスティバル」を主催し現在は共同委員長。12年衆院選に神奈川6区で初当選、現4期。立憲民主党神奈川県連代表、衆議院内閣委員会筆頭理事、外国人材支援機構(HuReDee)理事。

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 ■人物略歴

ファム・クアン・ヒエウ氏

 駐日ベトナム大使 1975年ハイズォン省出身。98年ベトナム外務省に入省し、国際法・条約局の専門官。2003年に名古屋大大学院に留学して修士号を取得し、07年外務省官房副首相秘書に就任。10年官房副長となり12年に国連ベトナム代表部参事官として米ニューヨークに赴任。帰国後外務省副局長、16年同局長、23年5月に駐日ベトナム大使に着任

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 ■人物略歴

フォンチー氏

 俳優 日本生まれ、日本育ちのベトナム人女優。元「アイドリング!!!」創設メンバー。2010年からベトナムフェスティバルの宣伝部長と総合司会を務め、日本とベトナム友好の懸け橋として精力的に活動している。主な出演作はTBS系ドラマ「MIU404」、劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~」など。

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